pRBCを輸血した犬における血液検査・臨床スコアの関連性
Kisielewicz, C., Self, I. & Bell, R. Assessment of Clinical and Laboratory Variables as a Guide to Packed Red Blood Cell Transfusion of Euvolemic Anemic Dogs. J. Vet. Intern. Med. 28, 576–582 (2014).
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jvim.12280
Intro
輸血は副作用やコスト、献血検体の確保の難しさがあるため、輸血適用条件は厳密に検討する必要がある
しかしながら、輸血適用条件に関する統一見解は存在せず、Hb濃度を指標に主観的に輸血適否を決定しているのが現状である
Hbの他に乳酸濃度の増加とDO2低下が輸血適否のマーカーとして研究されている
乳酸濃度上昇はDO2低下の結果として組織低酸素を示唆する所見
- 中心静脈の酸素飽和度はDO2の近似指標と考えられるが、検査自体が侵襲的で難しい
- 末梢静脈酸素濃度(CvO2)はDO2の代替指標となる可能性があるが、検証されていない
本研究の目的
pRBCを輸血された犬におけるHb、Ht、CvO2、乳酸、臨床スコアの変化量を評価することで、輸血実施条件を確立する基盤的情報を提供すること
Methods
- 単施設Prospective study
- inclusion: Ht37%>の犬 (n=24)
exclusion: 酸素投与、呼吸器・心血管系疾患、呼吸困難症状有り、歩様異常をきたす神経筋/整形学的疾患、脱水、循環血液量減少、高ビリルビン血症、治療介入が必要な輸血副反応が疑われる患者
患者は急性貧血、慢性貧血に区分
- 輸血必要性は担当獣医師がHt、臨床検査に基づき独立して判断
ただし、ADCAS、乳酸値、CvO2はブラインドで取得され、輸血実施判断には使用されない
→ADCASは担当獣医師とは別の獣医師が評価
輸血による目標PCVは担当獣医師によって独立して決定されるが、施設の推奨目標はPCV20-30%としている
- 輸血の前投薬は実施せず。
Outcome
anemic dog clinical assessment score (ADCAS)
→可視粘膜色、脈圧、HR、RR、運動不耐性を0-3の四段階、15点満点でスコア化
Ht,Hb,CvO2, Lactate
Results
- n=24 (FS 14, F 1, MC 7, M 2; DEA1.1+ 10, - 12, unkown 2)
- 6y, median 21kg
- ADCASは輸血前後で減少(改善)
- Ht, Hb, CvO2, Lactateは輸血後に改善
Discussion
臨床的に再輸血が必要と思われた症例はADCASでも依然として高いスコアであったことから、ADCASは輸血反応性のスコアリングシステムとして有用かもしれない
Hbは輸血反応性を示す指標としてやはり使えるかも;とくにHb <5.8g/dLが閾値になるかも?
CvO2はHbとともにDO2の代替指標と考えられるが、今回の結果ではHb以上の情報を示さなかった
lactateは輸血後低下したが、顕著な減少ではなく、再輸血の必要性を判断することはできなかった
→採血のタイミングによって変わるのではないか?
感想
- 今回のPopulatiuonは、貧血以外の基礎疾患をなるべく除外した中型ー大型犬が対象。
今回の結果では臨床スコアが結構いい感じで、Hbと組み合わせて有用な輸血トリガーになる予感。ただし、考察でも述べられていたが、今回の循環血液量減少や黄疸などがない今回のPopulationだからこそ正確にスコアリングできて有用だった可能性はあるので、外挿したときの妥当性は検証が必要だと思われる。
lactateは輸血反応性の指標として有望だと思っていたが、今回の研究ではそこまででもなかった。これもやはり、組織低灌流になりにくい今回のpopulationを反映しているのかも。病態に応じて適切な指標が変わり得るということなのかもしれない。
輸血後の再評価はどのタイミングで行われたか正確な明示がなかった(輸血後すぐと書いてあったが、、)ので、その部分の提示をしてほしかった。
臨床スコアを(おそらく)独立した別の獣医師が評価していたり、Exclusionを厳密に明示していたりと、研究デザインを対処している点もよかった