Target trial emulationの手法を用いて、二年間の体重変動がその後の7年間のCVDリスクに及ぼす影響を評価
Katsoulis, M. et al. Weight Change and the Onset of Cardiovascular Diseases: Emulating Trials Using Electronic Health Records. Epidemiology 32, 744–755 (2021).
最近臨床疫学で注目を浴びているTarget trial emulationの手法を用いて、 健常者の二年間の体重変動がその後の心血管系(CVD)リスクにどのような影響を与えるか調査したretrospectice study
retrospectiveのデータベース研究では有るが、TargetとなるRCTを想定し、そのフレームワークに沿った形で研究デザイン構築と解析を行った論文。
RCTの介入群の模倣として、138,567人の対象者を体重増加群(>=3% and <20%)、維持群(within 3%)、減少群(<=3% and <20%)に割付けし、心血管イベントの複合アウトカム(CVD death, myocardial infarction, stroke, hospitalization from CHD, heart failure)のハザードリスク(HR)を解析。
非常にデザインが緻密に練られており、Time zero, 各種biasの対処法、感度分析、RCTへの模倣の仕方、論文表現など、疫学の知識を総動員しないと味わえない論文だった。
以前(4月くらい?)にも読んだことが有るのだが、そのときには全く理解できていなかったのだなと再確認。
二年間の体重介入はRCTでは相当難しそうだし、ましてやそのような実験的環境下での結果はReal worldでの効果を反映できてるのか疑問なので、Target trial emulationだからこそ評価できるタイプの因果推論研究なのだと思った。
読めば読むほど新しい気づきが得られる良い論文だった。。
1年間臨床疫学の勉強をしてきて、少しは成長できたんだな、と実感することができた。
まだまだ、理解できていなかったと感じることも多く(特にtime-dependent confounder)、この論文を総括的に批判的吟味したり、デザインに仕組まれた著者の思考を読み解くのは時間がかかりそう。また勉強して読み直す予定。