心臓外科の手術死亡の定義の妥当性を評価したretrospective study
Chan, P. G. et al. Operative mortality in adult cardiac surgery: is the currently utilized definition justified? J. Thorac. Dis. 13, 5582–5591 (2021).
Society of Thoracic Surgeons (STS)によって定義された手術死亡が、現代社会において、真に手術と関連した死亡を捉えられているのか?妥当性を評価した研究。
単施設において2011-2017の間に行われたCABG, AVR, MVR, MVrなどの心臓外科をreview
- STSにおける手術死亡の定義:
-
- all deaths occurring during the acute episode of hospitalization in which the operation was performed (this includes patients transferred to other acute facilities), even if after 30-day
- deaths occurring after discharge but within 30-day of the procedure, regardless of cause.
- primary outcome:
STSで定義された手術死亡(30日以内死亡or同一入院内死亡)のタイミング - secondary outcome:
死亡原因、術後併発症 それぞれの発生率
<results>
- 11190の心臓外科がindexとして記録
- そのうち手術死亡は2.2%
- 手術死亡のうち、83.7%は30d以内かつ入院中死亡
- 6.9%は30d以内かつ退院後死亡
- 11.2%は30d overで死亡
- 手術死亡の99.2%は手術indexに関連した死因だった
→交通事故などの心臓外科とは関連しない要因による死亡が影響している可能性を考えたが、本結果より、STSの手術死亡の定義は実際の手術に起因した死亡をうまく捉えられていると見なせる、と結論づけている - 手術死亡の死因は心原性(38.7%), 腎不全(15.6%), 脳梗塞(13.9%)
- -術後併発症として、輸血(80.1%), reope (65%), 人工換気の延長(62.2%)
<感想>
手術死亡の定義の妥当性を検証した研究を読むのは初めてだったので新鮮。
手術死亡の妥当性の定義って本当に必要なのだろうか、と思ったが、Discussionの以下の記述でなるほど、と膝を打った。
They also suggested that extending operative mortality to include the post-discharge period, regardless of location, was important to remove any incentive for unethically prolonging the life of a dying patient past the 30-day cutoff or transferring a medically futile patient to another facility to avoid a mortality.
つまり、予後不良の患者を別の医療施設に移動させたりして、手術成績を見かけ上良くする(30日死亡に計上されないようにするため)ようなインセンティブを防ぐために、手術死亡の定義を拡張して、施設によらず退院後も手術死亡に含めるべきだ、という提案。
しかし、Huaらの研究では、そのようなインセンティブの証拠となるような動き(30日以上経過してから死亡率が急激に上昇するような変化)は認められなかった、としている。
確かに競争の熾烈な分野ではそのようなインセンティブは生じ得るよな、、と思った。
勤務獣医師としては、そのような発想自体浮かばなかったが、経営に携わるような地位の医師/獣医師の場合、考え方が変わるのだろうか。恐ろしい話だが。。
でもHuaらの研究をみてちょっと一安心した。
30日死亡が本当に適切なのか?の議論も出ていて、こちらもなるほどな、と感心した。
議論の中では、30日死亡だと施設成績を過小推定してしまう、90日以降で死亡のハザードが頭打ちに達しており、90日死亡の方が1年後転帰を良く反映しているなどの話が出ていた。
先行研究でいつも登場するし、しかもキリが良いから、という理由で適当に30日をcut-offにしてしまっていたことを反省。