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<論文感想>医学研究における統計解析結果の報告方法に関する推奨~Lancetより

医学研究における統計解析結果の報告方法に関する推奨

Mansournia, M. A. & Nazemipour, M. Recommendations for accurate reporting in medical research statistics. Lancet 403, 611–612 (2024).

https://doi.org/10.1016/S0140-6736(24)00139-9

Lancetの編集グループ発、過去3年間に渡る1000本を超える投稿論文のレビュー経験より、統計解析において過不足無く提示すべき情報、適切な報告に関するガイドラインをたった2枚のPDFにまとめて簡潔に提示したCorrespondence。 首肯するしかないもっともなデータの提示法から、知らなかった概念の提示までシンプルに纏めてくれている。各項目において重要な引用文献を提示してくれているので、この論文をアンカーにしてさらに深掘りできたのがとてもよかった。

  1. データの分布形状を確認して、要約統計量をmean+SDか、median+IQRで提示せよ

    Supplementには各変数のヒストグラムやTableを提示せよ

  2. 解析に用いたあらゆる統計モデルの仮定を吟味して、視覚的に妥当性を評価せよ

  3. p値は二分化せず、正確なp値を報告せよ(例:not p<0.05, but p=0.032)

  4. 適切に算出された効果量の95%信頼区間と臨床的重要性を見て効果の程度を解釈せよ;"no effect"は安易に使うな

  5. 交絡因子は有意差検定で選択せず、背景知識に基づき検討し、DAGでその思考を描出せよ

  6. 結果に影響しうるほどデータの欠測がある場合、逆確率重み付けか多重代入法による欠測補完をせよ

  7. 比率推定においてsparse-data biasの存在の評価と適切な対処をせよ

    Greenland et al., BMJ, 2016がこの辺りのわかりやすい解説論文を出している

  8. アウトカム発生頻度が高い場合、ORではなくRR,RDを報告せよ

    modified Poisson regression, regression standardizationでRR,RDを推定できるとのこと。知らなかったので深掘りしてみる。

    Zou, American Journal of Epidemiology, 2004; Greenland, American Journal of Epidemiology, 2004

  9. 統計モデルにおける交互作用項の評価では、乗法的(Odds or Rate)なスケールだけでなく加法的(Risk)で評価せよ

    ここも知らない概念だった。交互作用項には乗法的なもの、加法的なものがあるらしい。

    Knol et al., International Journal of Epidemiology, 2012 を参考にして深掘りしてみる。