心臓外科手術の予後予測モデルの更新手法についての提案論文
Hickey, G. L. et al. Dynamic Prediction Modeling Approaches for Cardiac Surgery. Circ.: Cardiovasc. Qual. Outcomes 6, 649–658 (2018).
https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/CIRCOUTCOMES.111.000012
<intro>
- 心臓外科の予後予測モデルが様々提案されているが、医療の進展とともに予測と現実の結果に乖離が生じ、予測性能が悪化している
- そのため、予測性能を保つためには予測モデルのupdateが必要になってくる
- 本研究では最適なmodel updateの方法を検討するために、4つのパラメータ更新方法を比較
<method>
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有名な心臓外科手術予後予測モデルの一つであるEuroSCORE modelを使用して、経年的なパラメータの推定値の変動を可視化
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approach 1: no updating; 元のモデルのまま
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approach 2: periodic update
12ヶ月毎 or 24ヶ月毎にmodelのcalibrationを行い、共変量の推定値を更新する -
approach 3: rolling window
2年間のデータでmodel calibrationを行い、そのモデルで後半1年間の共変量の推定値を算出(12ヶ月毎更新 or 1ヶ月毎更新)
例) 2002-2004年(2年間)でモデルフィット→2003-2004年における共変量の推定値として当てはめ→2003-2004年でモデルフィット→・・・繰り返し -
approach 4: Dynamic Logistic Regression
ベイジアンモデル。細かい理論は追えていないが、時刻tまでのデータで推定したモデルの推定値を時刻t+1での事前分布とみなして次々更新していく手法っぽい。
approach3に似ているが、異なる点は、tにおける推定値とt+1における実測値を組み合わせて予測モデルを作成している点。
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<results>
- EuroSCORE(logistic regression model)の各共変量項と切片項の推定値を時間変動を手法ごとに比較している
- 切片項だけで取り上げるが、年ごとに大きく推定値が変化していることがわかる
- approach1 (無更新)では変化なしなので横一直線、apporach 2→4とモデルが複雑になっていき、なめらかな推移になっていくが、approach3,4になるとほとんど同じような動き方をしているのがわかる
- モデル更新手法は、推定の良さ(現実との当てはまりの良さ)と、手法の複雑さのバランスで決めていく必要があるが、これを見るとapproach3の12ヶ月更新verでも十分良さそうな気がする。
<感想>
予測モデルは賞味期限があり、医学の進歩とともにズレが生じていくのはなんとなくわかっていたが、定量的に可視化してみると、こんなにダイナミックに変動するのか、、と驚いた。
5年前に作ったモデルを使うことに意味はあるの、、?とすら思ってしまう。
予測モデルを作成するときには、最初から更新することを織り込んだモデルにしたほうが良い気がする。
今回の論文では手法ごとの推定値の変動を見ているが、予測性能がどれくらい上がったか、という定量的な議論はしていないので、更新モデルの複雑さと、更新性能の良さのバランスの落とし所まではわからないはず、というのが感想。