備忘録 as vet.

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<論文感想>無兆候MMVD犬に対するACEiの治療効果を評価したsystematic review, meta analysis

無兆候MMVD犬に対するACEiの治療効果を評価したSR/MR

 

Donati, P. et al. Angiotensin-converting enzyme inhibitors in preclinical myxomatous mitral valve disease in dogs: systematic review and meta-analysis. J. Small Anim. Pr. 63, 362–371 (2022).

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jsap.13461

 

<method>
  • 4本のRCTが最終的に採択
  • 心血管関連死亡、うっ血性心不全発症、全死亡、腎臓関連有害事象のアウトカムを統合指標で評価
  • outcome follow upは60日以上の研究のみ採択
  • コクランレビューに則り、RoBで各研究の質、GRADEで最終的な統合結果の確信度を評価

 

<results>
  • うっ血性心不全発症をアウトカムにしたとき、4本の研究全てでlow risk of biasであった
  • うっ血性心不全発症/心臓関連死亡/全死亡において、ACEiはプラセボと比べて有意な効果をもたらさなかった
  • 心拡大がない犬の有害事象についてはACEiでわずかに少ない、という結果
  • 心拡大あり患者におけるうっ血性心不全の発症では結果の信頼度はHIGHであり、それ以外のアウトカムの信頼度はLOWであった
  • GRADE HIGHということは、新規の研究があっても今回の統合結果の信頼性は変わらないだろう、と見込める程度の確信度ということ。 つまり、心拡大がある犬のうっ血性心不全発症については、ACEiはプラセボと比べて有益な効果をもたらすとは言えない、という結果で今後も落ち着く可能性が高い、と著者らは考えている。
  • それ以外のアウトカムについてはGRADEがすべてLOWであり、追加の研究をすることで今回の統合結果の信頼性がかなり高い確率で変化するだろう、という評価。

<感想>
  • ACEiは少なくともStageB2の犬におけるうっ血性心不全の発症抑制の効果は見込めないと考えて差し支えなさそう。 ただし、その評価基準の妥当性はよく考える必要がある
    • 一点目は、GRADEのimprecisionについて、 メタ解析におけるOISやTSAを用いた評価の記載がないこと;
    • 二点目は3RCTしか組み込まれていないので、publication biasを評価することが難しいこと。
  • 以上より、GRADE HIGHと評するに値する判断根拠があったのか、透明性が担保されないので、やや疑問が残る。 全体を通してみると、研究としてまだ知見が足りていないのは心拡大がない状態のMMVD患者(stage B1)であり、このステージに焦点を置いた追加RCTは意味があるかも。
  • 心拡大を起こしているStageB2の犬では、あえてACEiを使う意味はないのかもしれない。