備忘録 as vet.

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<論文感想> Feline subclinical HCMに対する週一回rapamycin投与の心筋肥厚抑制効果、安全性を評価した探索的/Pilot-RCT

 

doi.org

Kaplan, J. L. et al. Delayed-release rapamycin halts progression of left ventricular hypertrophy in subclinical feline hypertrophic cardiomyopathy: results of the RAPACAT trial. J. Am. Vet. Méd. Assoc. 1–10 (2023) doi:10.2460/javma.23.04.0187.

 

所見:

subclinical feline HCMに対するq1wの徐放性ラパマイシン投与が心筋肥厚抑制に効果的か・安全性を評価したTriple-arm(pracebo vs low-dose vs high-dose) 二重盲検RCT

RCTのデザインは丁寧に記述されており、除外理由も細部まで記載されていて好印象。


一方で、180dでのplaceboと比較した心筋肥厚抑制効果が認められているが、あくまでも探索的,dose-determining的研究をベースにした研究設計のため、有効性の評価は慎重に考える必要がある。

[理由1]
α=0.1,1-β=0.9と検出力高めに設計され、サンプルサイズは少なめに算出。

[理由2]
解析から除外された患者が比較的多く、かつ有意差はないが群間で偏りがある。7例が解析から除外(pracebo1, low1, high5)され、そのうちhighの2例ではCHF発症。
CHF発症はHCMと関連する可能性が高いので、除外されたことはrapa群にとって有利な結果となっているかもしれない。各群の症例数は、有意差が検出されたday180ではpracebo:12, low-dose: 14, high-dose:10なので、この除外は結果に影響を及ぼし得る。


研究目的が有効性評価を主目的としていながらも、研究デザインは探索的/dose-determiningをベースとした設計になっている。しかしDiscussionでは有効性を強調したフレーズが出ていたり、一方で統計学的な弱点について複数回明示していたりと、論文全体を通して、研究目的の一貫性がない印象を受ける。

RCTなのに患者特性を要約したTable(通常はTable1にあたる)がなく、supplementには一応それっぽいものがあるが、情報が少なく、構成も読みにくい。各群の患者特性の要約はしっかりTable1で出してほしかった。

考察では統計学的な弱点についても複数回明示されており、全体的には丁寧な印象だが、解析除外の影響はクリティカルと考えるためもう少し言及が欲しかったところ。

 

総括:
次に繋がる良いPilot RCTだと思う。
解析結果は上述したような強いlimitaionが残るため、Abstractの結果だけを見るのは危険。
中長期の有効性にフォーカスした次のRCTに期待が高まる。