レボシメンダン(LSM)の急性心不全への適応に関するレビュー論文
Glinka, L., Mayzner-Zawadzka, E., Onichimowski, D., Jalali, R. & Glinka, M. Levosimendan in the modern treatment of patients with acute heart failure of various aetiologies. Arch. Méd. Sci. : AMS 17, 296–303 (2019).
https://doi.org/10.5114/aoms.2018.77055
<LSMの薬理作用>
1)TnCのCa感受性増大 →酸素消費を増大させずに心筋収縮力増大 (Caの細胞内流入量増加 →心筋細胞内の酸素消費増加につながる)
2)血管平滑筋細胞におけるATP依存性Kチャネルの開口 →動脈、静脈、冠動脈の血管拡張
3)ミトコンドリアにおけるATP依存性Kチャネル開口→エネルギー利用効率(意訳)の改善 →酸素欠乏に対する抵抗性増加(?)
<LSMの臨床的効果>
1)心拍出量(CO)増加
2)Stroke volume増加
3)肺毛細血管楔入圧(PCWP)減少
4)肺血管抵抗(PVR)減少
5)平均肺動脈圧(MPAP)減少
6)全身血管抵抗(SVR)低下
<LSMのDose>
推奨量: 0.05-0.2mg/kg/min
second regimen: 6-12ug/kg/10min CRI
→顕著な血圧減少の可能性があるので推奨されない
<急性心不全>
-LSMは心筋酸素需要を増やさずに収縮力を改善する利点がある
-ドブタミンと比較して、血行動態への効果は同等だが、LSMは酸素消費量を増加させず、催不整脈作用は低かった
<右心室不全>
LSMは肺血管拡張→右心の後負荷減少→右心収縮改善、PCWP減少、右心冠動脈血流改善
<周産期心筋症, たこつぼ心筋症、stunned myocardium 仮死心筋>
ストレス起因の高濃度の血漿中カテコラミンがたこつぼ心筋症を誘発と考えられている
→LSMはカテコラミンを上昇させずに心機能を改善する可能性があると考えられる
仮死心筋:
アドレナリン受容体の感受性増加、全身性炎症反応が原因と考えられている →β1受容体のdown-regulationなどから従来の強心薬は効果的でない
<Caチャネルブロッカー中毒>
Caチャネルブロッカー中毒は、心筋細胞へのCa flowの阻害による収縮不全
→心原性ショック LSMによりCaの心筋細胞内流入の改善を起こすことで、Caチャネル受容体とは別の経路で中毒に対する改善を引き起こす
<敗血症性ショック>
-LeoPARDSという比較試験では、sepsis shockに対する有益性は得られず
-むしろ上室性頻拍と人工換気の期間がLVM群で延長し、高用量のノルアドレナリンが必要だった
<LSMの副作用>
頻脈、低血圧、不整脈、低K血症、頭痛 、めまい、不眠、消化器症状
プロダクトシート(?)によれば:
が、実臨床では...
急性心不全患者で上記の条件がない患者などいないので、
-低K血症、循環血液量低下、SYS 100mmHg<へ補正を行った後に、LSMの使用を推奨
-著しい腎機能低下(GFR <30ml/min)、肝機能低下患者への適用は推奨されていない
→肝機能低下のボーダーラインは決まっていない
しかしながら、LSMは臓器還流を改善することで多臓器の機能を改善することがあるので、個々の患者に合わせて行く必要がある