備忘録 as vet.

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<論文感想>HFrEF患者における入院時→退院時のACEi/ARBの使用パターンと予後の関連性に関するDB研究

心不全症状で入院したHFrEF患者において、ACEi/ARBを継続的に使用するか中断するかのパターンと短期・長期の予後の関連性を評価

Gilstrap, L. G. et al. Initiation, Continuation, or Withdrawal of Angiotensin-Converting Enzyme Inhibitors/Angiotensin Receptor Blockers and Outcomes in Patients Hospitalized With Heart Failure With Reduced Ejection Fraction. J. Am. Hear. Assoc. 6, e004675 (2017).

https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/JAHA.116.004675

introduction

  • HFrEFの症状の緩和/併発症,死亡の減少目的でACEi/ARB を使用することが推奨されている(ClassI, levelA)
  • しかし、急性心不全による入院後にACEi/ARB を継続/非継続使用したときの効果検証は不十分
  • 本研究では、ACEi/ARBの使い方と予後の関連を明らかにすることを目的としている

method

  • Get With The Guidelines Heart Failure (GWTG-HF) registryとMedicareの入院データをあわせたDB研究
  • 2005-2013年において心不全と診断された患者130155人を同定。そこからHFrEF(EF<40%)に絞り、ACEi/ARBの禁忌病態や心臓移植の実施、緩和ケア治療のみの患者などを除外し最終的に16052人が解析に組み込まれる
  • 対象患者をACEi/ARBの使用法で4群に分類:

    • continued群…入院時も退院時も使用
    • started群…入院時は未使用で退院時に開始
    • discontinued群…入院時使用するも退院時は不使用
    • not started群…入院時も退院時も不使用
  • Endpointは、30,90日,1年時点全死亡率; 30,90日,1年時点再入院率; 全死亡と再入院率の複合アウトカム

  • 多変量Cox比例ハザードモデルによりHR算出
  • 共変量: 年齢、性別、人種、既往歴、年間心不全入院回数、喫煙歴、入院時体重、入院時HR,RR,SBP、入院時BT(Na,Hb,BUN,Cre,eGFR),退院時K、EF,退院時βブロッカーの使用、入院中処置(透析、人工呼吸など)、病院の特徴(病床数、立地、教育病院かどうか、経皮的インターベンション、心臓外科、心臓移植の実施状況)など。

results

  • 30日全死亡のハザード比はcontinued群に比べて、discontinued群(HR1.92)、not started群(1.50)で増加
  • 90日全死亡、1年全死亡も同様の傾向
  • 特に、ACEi/ARBを最初から使っていない群(not started)よりも、途中で中止(discontinued)したほうがハザード比が高い傾向 →ACEi/ARBは途中で治療中止しないほうが良い可能性
  • さらに、started群のほうがcontinued群よりハザード比の点推定値が高い傾向 →最初からACEi/ARB治療をしていたほうが良い可能性

感想

大規模DB研究。着眼点が面白かった。ヒトではHFrEFにはACEi/ARBは高いエビデンスレベルで使用が推奨されているが、犬のMMVDでは効果があまり乏しい結果なので、病態の違いを反映しているのかもしれない。犬でも収縮能低下しているような病態では効果があるのかも?

ガイドラインで推奨されているが、HFrEF患者かつ、禁忌条件でないにも関わらず、discontined/not startedにされるのはどのような理由なのか気になる。担当した医師が不要と判断したのだと思うが、病態としてHFrEFを脱したからなのか、ガイドラインを逸脱した治療レジメンを組んでいるのか、どういう理由なのだろうか。患者の病態やACEi/ARBの有効性とは別の観点で予後に影響していそうな気もする。 共変量には病院の特性も組み込まれていたが、Limitaionにもあるように治療のアドヒアランスに関する調整はできていないので、Biasの影響が残っている可能性は全然ありそう。 とはいえ、30日という短期から長期まで一貫した結果が得られていることを考えると、アドヒアランスや担当医師の志向といった外的要因がメインで寄与しているとは考えにくいのかもしれない。

これらの結果を踏まえると、ACEi/ARBは長期でも効いてくる重要な薬剤なんだなと再認識。